長続きする内科医師 転職
その施策に則って退職する者には、年収の三年分か特別退職金として支払われるという条件がついていました。
二00二年四月のことです。
「やるだけのことはやってきたのだから、会社にはもう未練はなにもない。
辞めるにはちょうどいい機会かもしれない」子どもはすでに大学生になり、住宅のローンも完済していました。
経済的な面で躊躇すべき理由はなにもなかったといいます。
「妻は、退職してから家でぶらぶらされるのだけは嫌だといっていましたが、退職すること自体には、特別に反対はしませんでした」唯一、Mさんの決心を遅らせていたのは、「はたして次の就職先があるのかどうか」という不安でした。
しかし、会社側はその不安を和らげるべく、退職者に対し、再就職支援会社のサポートを受けられる制度を用意してくれていました。
「それなら、なんとかなるだろう」と、ついに意を決します。
悩みはしたものの、三十二年間という勤続年数の長さを考えると、あっけないほど早い決断だったといいます。
他の業種に比べ、旅行会社に勤務されていた方というのは、「自分がどういうスキルを持っているか」について明確にしにくい面があると、Mさんを担当したNLCAのキャリアコンサルタントはいいます。
そのことは、転進活動においても、どういうキャリアステージをつくっていくのかが難しいということを意味します。
Mさんご自身も、「私にはなにも特別、武器になるようなスキルはありませんから」といった具合で、二人は明確な方向性が見えぬまま、手探りで活動をはじめたといいます。
何度か面談を繰り返すなかで、Mさんの「人の役に立ちたい」という思いがとても強いことや、実際に三〜四年前から病人の方を病院に連れていくガイドーヘルプのボランティア活動をしていたこと、添乗員としての経験も豊富でヒューマンスキルやホスピタリティ(もてなしの心)に長けていることなどから、「福祉」というものをキーワードにして転進を考えていくという方向性が、自ずと決まっていきました。
まずはヘルパー二級の資格です。
その資格を得るために、職業訓練校に三ヵ月間通うことになりました。
「とにかく一日も欠席さえしなければ、資格は取得できるのだから」との思いで、高齢者を風呂に入れたり、オムツを取り替えたりする実習にも懸命に取り組みました。
その結果、めでたく資格を取得し、求職活動を開始。
ただあらかじめ分かっていたこととはいえ、求人企業は決して多くありません。
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